1994年のフィンランドの研究では、喫煙者にβカロチンと偽薬を6年間投与したところ、βカロチンを服用した人たちの方が心筋梗塞の発症率が高くなってしまい、肺ガンと前立腺ガンの発症も増加したと報告されています。
また、1996年のアメリカの医師が参加した研究でも、虚血性心疾患やガンなどの予防効果はないという結論が出ています。
衝撃的だったのは1996年に発表された大規模臨床試験の結果です。
肺ガンのリスクの高い人を対象にした無作為化対照試験で、予想とは裏腹にβカロチンとビタミンAを投与されたグループの方が偽薬のグループよりも肺ガン発症率が高くなったため、研究は予定より早く中止されてしまったのです。
このほか、1997年に発表された研究では、βカロチンの方が偽薬よりも心筋梗塞の発症率が高くなったという報告もあります。
これらの結果は、βカロチンは動脈硬化を予防するどころか、むしろ促進してしまい、ガンの予防効果もないということを示しています。
それなら以前の疫学調査の結果は何だったのかという疑問が起こります。
飲酒が原因だという研究者もいます。
しかし、疫学調査で効果が認められたのは、緑黄色野菜や果物からβカロチンを摂取した場合が大部分だったことから、βカロチンの抗酸化作用が十分に発揮されるには、ビタミンEやフラボノイドなど他の抗酸化物質の存在が必要なのだという考えの方が正しいようです。
βカロチンで病気を予防したいのなら、栄養補助食品(サプリメント)ではなく、いろいろな緑黄色野菜や果物から摂取するのが望ましいのではないでしょうか。
前記の研究報告を考えると、βカロチンだけを多量に摂っても動脈硬化やガン予防の効果はなく、むしろそれらを悪化させる可能性があります。
βカロチンを積極的に摂っている人は、すぐにやめた方がいいと思います。
ポリフェノールもマスコミによく取り上げられます。
日本で注目されるようになったきっかけは、おそらく赤ワインではないでしょうか。
フランス人はほかの欧米諸国の人たちと類似した油の多い食生活を送っているにもかかわらず、虚血性心疾患の発症率が低いことが知られています。
これをフレンチパラドックスと呼びますが、その理由としてフランス人がよく飲む赤ワインに含まれるポリフェノールが考えられました。
赤ワインを飲むと血液中の抗酸化能が上昇することが、実験的に証明されたからです。
最近発表された疫学研究でも、ワインは他のアルコールに比べて虚血性疾患やガンの発症を低下させることが示されています。
ただし、ワインもアルコール飲料であることにかわりはありません。
アルコールが肝臓で代謝されるときに活性酸素を発生することが知られていますから、健康にいいからといってワインばかり飲み過ぎると逆効果の可能性大です。
赤ワイン以外のポリフェノールを含む食品での基礎研究では、緑茶や紅茶を飲むと血液中の抗酸化作用が増すことが証明されています。
緑茶や紅茶で動脈硬化が抑制されたという報告はまだないものの、ある程度予防できる期待は持てます。
ポリフェノールのガン予防については、主として紅茶と発ガン性に関する疫学的研究があります。
しかし、その結果は前述したビタミンEのケースと同様に、発ガンを抑制したとするもの、無関係とするもの、発ガンを促進したとするもの、いろいろであり結論は出ていません。
無関係とする報告が大部分ですが、大腸ガン、脾臓ガン、乳ガンは紅茶を飲むことで発ガンを抑制したという論文が多く、逆に食道ガンは増加すると結論した論文が多いようです。
緑茶では、胃ガンの発生を抑制するという論文がいくつかあります。
埼玉ガンセンターのN医師らのグループが中心に研究しており、基礎研究では緑茶がガン細胞の増殖を抑制することが証明されています。
ポリフェノールの知識でもっとも大切なのは、それが多くの食品にごくふつうに含まれている物質だということです。
フラボノイドとノンフラボノイドに分類されるすべての総称がポリフェノールなのです。
赤ワインやチョコレート、ココアに特別たくさん含まれるわけではありません。
赤ワインやチョコレートがマスコミをにぎわしたのは、リンゴやブロッコリーよりもインパクトが強くて、スポンサー受けもいいからにすぎないのです。
たしかにポリフェノールには抗酸化作用があるようです。
ただ、その作用は動脈硬化やガンを十分予防できるほどではなく、せいぜいその発症を遅らせるぐらいでしょう。
ブームの赤ワインにしたところで、飲み過ぎれば肝障害を来しますし、アルコールに弱い人には勧められません。
むしろ、緑茶の方が日常的に飲みやすく、カテキンには抗菌作用もあるといわれているので、私なら赤ワインより緑茶を勧めます。
マスコミ等では「環境ホルモン」といういい方をよく使っていますが、英語では分裂させるとか崩壊させるという意味であり、内分泌撹乱物質とした方がその性格をよく表します。
環境ホルモンでは、何か体にいいもののような印象を与え、内在する危険性を十分表現できないのではないかと考えます。
内分泌撹乱物質はなぜ問題になっているのか世界中には多くの化学物質が存在し、毎年新たな物質が合成されています。
質のなかには人体に有害なものも数多くあります。
一般にその化学物質が人体に有害であるかどうかを確認するためには、毒性試験を行います。
実験動物に投与して致死量を調べたり、試験管の中で発ガン性のテストをすることで毒性の有無を調べるわけです。
しかし、内分泌撹乱物質と呼ばれる化学物質は、こういう毒性や発ガン性を示す濃度よりもはるかに低濃度、従来安全とされていた濃度で作用を発揮します。
動物の体内にあるホルモンと類似の働きをして、本来正常に保たれていた体のバランスを乱すというのがその作用で、環境ホルモンという別名もここからきています。
とりわけ重要なのは、大人の体にはあまり影響を与えない濃度でも、胎児期や幼児期にはその子供の将来に大きな問題を起こすほどの影響を与えることです。
胎児期に内分泌撹乱物質にさらされた場合、それがごくわずかな量であっても、生殖器の発達に障害を起こし、雄であるべきものが雌のような形態になってしまうこともあり得るのです。
このような危険性を従来のこれらの化学物毒性検査でとらえることはできません。
内分泌撹乱物質からの影響を最小限にとどめるために妊婦、乳幼児あるいは近い将来妊娠の可能性がある人たちは、日常生活で次のようなことに注意する必要があると思います。
まず食事では、動物性脂肪をなるべく減らした方がいいでしょう。
大半の化学物質は油に溶け込む形で広がってきます。
食物連鎖によって化学物質がしだいに濃縮され、連鎖の上位にある動物の脂肪、肉、牛乳などには環境中よりも高濃度の化学物質が溶け込んでいるのです。
また、有機栽培された野菜、穀類、果物を多く摂ることも大切です。
農薬は化学物質であり、なかには内分泌撹乱物質とされているものもあります。
プラスチックから内分泌撹乱物質となる化学物質が溶け出す可能性もあるので、食べ物とプラスチックの接触も最小限にしたいものです。
特に熱が加わったときに溶けだしやすくなります。
プラスチック容器に入れたり、ラップをかけたりして電子レンジで温めない、食物や飲み物を入れる容器にプラスチックを使わないなどの注意が必要です。
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